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大阪地方裁判所 平成10年(ワ)12252号 判決 2000年6月28日

原告

櫻木安雄

被告

吉原俊行

ほか一名

主文

一  被告らは連帯して、原告に対し、金八九五万八三九三円及びこれに対する平成八年一一月七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は、これを一〇分し、その七を原告の負担とし、その三を被告らの負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

被告らは連帯して、原告に対し、金三一九六万三九六〇円及びこれに対する平成八年一一月七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

一  訴訟の対象

民法七〇九条(交通事故、人身損害)、自賠法三条

二  争いのない事実及び証拠上明らかに認められる事実

(一)  交通事故の発生(甲一)

<1> 平成八年一一月七日(木曜日)午後八時五三分ころ(晴れ)

<2> 大阪府豊中市島江一―一―七

<3> 被告吉原俊行(以下、被告俊行という。)は、普通乗用自動車(神戸五二ら六七〇六)(以下、被告車両という。)を運転中

<4> 原告(昭和一七年八月一六日生まれ、当時五四歳)は普通乗用自動車(なにわ五五う七六九五)(以下、原告車両という。)を運転中

<5> 被告車両が原告車両に追突した。

(二)  責任(弁論の全趣旨)

被告俊行は、前をよく見ないで運転して、原告車両に追突した過失がある。したがって、被告俊行は、民法七〇九条に基づき、損害賠償義務を負う。

被告吉原裕和は、被告車両を所有している。したがって、自賠法三条に基づき、損害賠償義務を負う。

(三)  傷害(甲三)

原告は、本件事故により、頸椎捻挫、頭部、腰部、左肩打撲などの傷害を負った。

(四)  治療(乙三ないし二五)

原告は、次のとおり入通院して、治療を受けた。

<1> 林病院

平成八年一一月七日から平成九年一月一七日まで通院(実日数三五日)

平成九年一月二〇日から五月一二日まで一一三日間入院平成九年五月一九日と平成一〇年四月二日に通院

<2> 豊中ひかり病院

平成九年五月二一日から平成一〇年四月一日まで通院(実日数二五八日)

<3> さわ病院

平成八年一二月二四日、平成九年四月七日、平成九年九月二五日に通院

(五)  後遺障害(乙三五)

自動車保険料率算定会は、原告の後遺障害が後遺障害別等級表の脊柱の変形として一一級七号、左下肢等の頑固な神経症状として一二級一二号の併合一〇級に該当する旨の認定をした。

ただし、後記の前回の交通事故があり、一二級一二号の認定を受けていたことは把握していなかった。

三  原告の主張

原告主張の損害は、別紙一のとおりである。

四  争点と被告らの主張

(一)  争点

相当因果関係、既往症減額

(二)  被告らの主張

原告の本件事故後の症状は、本件事故前からあった頸部脊椎症、後縦靱帯骨化症(骨性の突出により椎間孔が著しく狭小化されている。)によるものであるから、原告の症状と本件事故との間には相当因果関係はない。

また、原告は、自算会から後遺障害の認定を受けているが、本件事故前に交通事故にあい、一二級一二号の後遺障害が残った旨の認定を受けている。前回の事故後と本件事故後のそれぞれのXPなどの画像を比べても、大きな変化は認められない。したがって、一二級一二号については、前回の交通事故後に認定された後遺障害と同じ内容であり、本件事故によって生じた損害とはいえない。

さらに、一一級七号については、骨性の突出と診断すべきところを 担当医が頸椎椎間板ヘルニアと誤診し、前方固定術を施行したことによるものである。したがって、たとえ前方固定術の結果、脊柱の変形が残ったとしても本件事故との間に相当因果関係はない。

仮に、本件事故との間に相当因果関係が認められるとしても、前記のとおり、疾患である頸部脊椎症、後縦靱帯骨化症によるものであるから、損害の大部分を減額すべきである。

第三争点に対する判断

一  証拠(甲三ないし一〇、乙二、二六ないし三二、三四ないし三六、証人岸本正文、原告の供述)によれば、次の事実を認めることができる。

(一)  前回の交通事故と本件事故までの経過

原告は、平成二年三月一三日、東名高速の小牧インター付近を、大型トラックを運転して走行中、後方から大型トラックに追突された。

原告は、大型トラックを運転して大阪に戻り、同日、林病院で診察を受けた。頸部痛があると訴え、頸部捻挫、頭部外傷Ⅰ型、前額部擦過傷と診断された。同日撮られたXPによると、C四からC六にかけて分節性の後縦靱帯骨化が認められた。また、C五/C六の椎間孔が骨性の突出により著しく狭小化していると認められた。さらに、同年四月二〇日に撮られたCTによると、C五/C六に左側優位の骨性の突出が認められた。さらに、同年五月一五日に撮られたMRIによると、C五/C六の椎間板の高位の突出、左側優位の突出が認められた。

原告は、通院中の同年四月四日ころから、左上下肢のしびれを訴えるようになり、同年六月一八日から同年七月二四日まで入院した。その後、ほかの病院でも治療を受けたりした。平成二年一一月ころ、今林整形外科病院の今林医師は、骨棘に起因する頸椎椎間孔狭窄が著明で、頸部脊椎管狭窄症に起因する頸部神経根症の症状が認められると診断している。また、平成三年八月ころ、兵田クリニックの兵田医師は、自覚症状は頸部痛と左上肢痛であり、C五/C六に骨突が著明で椎間板が狭小であると診断している。

平成三年一一月八日症状固定とされた。平成三年一一月付けの林病院の田中医師作成の後遺障害診断書によると、XPで頸椎症と後縦靱帯骨化症の所見があるが軽度であり、本来痛めやすくなっていた患部に大きな力が加わり症状が生じているとされた。

その後、自動車保険料率算定会から後遺障害別等級表一二級一二号に該当する旨の認定を受けた。この手続の際、原告は、治療を受けたが、現在(平成三年一一月)も、なお、左の首、肩、腕から手首までのうずくような痛みが続いているため、何もできず、普通乗用車の運転すらできず、仕事を辞めざるを得ない状態である旨の上申書を提出している。

原告は、平成四年五月ころ、痛みが軽減したので、茨木交通株式会社に入社し、さらに、数か月後、幸福交通株式会社に入社し、二年ほど勤務して、運転手の仕事をした。平成六年四月からは、大虎運輸に入社し、長距離トラックの運転手の仕事をした。平成七年夏ころからは、ダイキューフークス株式会社に入社し、繊維ロールの入れ替え作業の仕事をした。さらに、平成八年一〇月から幸福交通に再入社し、その仕事中に、本件事故が発生した。

(二)  本件事故の発生

本件事故は、被告車両が原告車両に追突したというものである。

つまり、原告車両は、バス停留所に停車したバスの後方にいったん停車した。被告俊行は、原告車両の後方約九・四mに達したとき、脇見をした。さらに後方約二mまで近づいたとき、前方の原告車両を見つけ、危険を感じ、ブレーキをかけたが、約一・八m進んで、原告車両に追突した。被告車両は約〇・八m進んで停止し、原告車両は約五・五m進んで停止した。

車両の損傷状況は、原告車両は、バンパーやテールランプに擦過様の損傷を受けた。その修理費は、休車補償を含めても、約一四万円である。

(三)  本件事故後の治療経過

原告は、本件事故が発生した当日の平成八年一一月七日、林病院で診察を受けた。前回の交通事故後に痛かったところがまた痛く、左手のしびれ、肩痛、頭痛があると訴え、頭部、頸部、左肩打撲、頸部捻挫と診断された。同日撮られたXPによると、C四からC六にかけて分節性の後縦靱帯骨化が認められ、C五/C六の椎間孔が骨性の突出により著しく狭小化していると認められた。ほかに、前回の事故後と比べ、C四/C五の骨化は頭尾方向に拡大していると認められた。

さらに、同年一二月二四日、さわ病院で、MRI検査を受け、C五/C六の椎間板の高位の突出、左側優位の突出が認められた。さわ病院の担当医は、脊椎症性変化があり、硬膜管が圧迫され、脊髄の変形がみられ、頸部脊椎症との所見を示した。

林病院の担当医岸本は、これを頸椎椎間板ヘルニアと診断した。

原告は、頸部と左上肢の痛みが続いたため、岸本医師と相談のうえ、ヘルニアの圧迫を取り除くための前方固定術を受けることに決めた。そこで、平成九年一月二〇日、入院し、同年一月二三日、C五/C六の前方除圧固定術を受けた。術後は、一時軽快したが、左上肢の痛みが再び現われたため、同年五月一二日まで入院した。

退院後の同年五月二一日からは、豊中ひかり病院(旧服部中央病院)に通院を始め、平成一〇年四月一日まで通院して、投薬と理学療法を受けた。林病院の岸本医師は、豊中ひかり病院の担当医に対し、明らかなまひ症状は認められず、自覚症状のみであり、手術適応はほとんどなく、本人の強い希望で前方固定術を施行したが、後縦靱帯骨化もあり、症状の改善には後方からの除圧が必要か?との診療情報提供書を交付した。

平成一〇年四月二日、症状固定した。しかし、自覚症状として、左上肢全体、右中指のしびれ感などが残り、他覚症状として、頸椎に運動制限が残った。

(四)  自動車保険料率算定会の認定

自動車保険料率算定会は、脊柱の変形として一一級七号、左上肢等の頑固な神経症状として一二級一二号の併合一〇級の認定をした。

(五)  当時林病院の岸本医師の見解

岸本医師は、原告が本件事故後林病院に通院したときの主治医であるが、平成九年八月六日ころ、原告訴訟代理人からの照会に対し、次のとおり回答した。

平成八年一二月二四日のMRI検査によると、C五/C六に頸椎椎間板ヘルニアを認め、前方除圧固定術を施行した。手術後、一時的に症状は軽快した。しかし、一か月後くらいから、再び左上肢の疼痛が現われた。本件事故前には著明な疼痛がなく、本件事故後の疼痛が強く、疼痛の原因は、椎間板の突出による神経圧迫以外には考えにくい。現時点でも、疼痛やしびれ感が明らかに残存しており、就労は困難である。前回の交通事故との関係については、前回の事故後症状は小康状態であり、勤務にも支障がなかったのであるから、前回の交通事故と本件事故とは直接の関係がないと考える。また、頸椎後縦靱帯骨化症があり、本件事故後の症状に何らかの悪影響を及ぼした可能性があるが、前記のとおり、直接の原因は本件事故によるものと考えられる。

証人岸本医師の本件尋問期日における証言も、ほぼ同じ内容である。

(六)  被告ら提出の医師の意見書

前回の交通事故後のXP、CT、MRIによると、骨棘形成と後縦靱帯骨化が認められ、C五/C六の椎間孔が著しく狭小化している。また、MRIによると、骨性の突出よりさらに突出した椎間板組織は認められないから、椎間板ヘルニアは認められない。

本件事故後のXP、MRIによると、C五/C六に椎間板の高位の突出が認められるが、骨性の突出を越える椎間板の突出は認められない。ところで、MRIでは、突出の内容が、骨性の突出(骨棘または靱帯骨化)か、椎間板の突出かを画像だけで正確に識別することは困難である。したがって、その識別は、XPやCTの画像と総合的に判断して診断する必要がある。本件では、C五/C六の椎間板高位の突出は、椎間板だけではなく、骨性の突出を伴ったものと判断すべきである。これが骨棘なのか、靱帯骨化なのかは、担当医の判断によるが、いずれにせよ、骨性の突出を明らかに越えた椎間板の突出は認められない。したがって、頸椎椎間板ヘルニアと診断することはできない。

また、前回の交通事故後と本件事故後のそれぞれの画像を比較検討すると、靱帯骨化の進展が認められるほかは、画像上、大きな変化は認められない。

二  これらの事実によれば、原告は、本件事故により、頸椎にある程度の衝撃を受け、その後、左上肢の痛みやしびれなどの症状が現れているから、頸椎捻挫の傷害を負ったと認められる。

ところが、治療を続けたにもかかわらず、症状が軽減せず、その程度も重く、頸椎椎間板ヘルニアの所見が認められたので、担当医と相談して、頸椎前方除圧固定術を受け、その結果、脊柱の変形(等級表一一級七号)の後遺障害が残ったから、この後遺障害は、本件事故と相当因果関係があると認められる。

しかし、本件事故後に、左上肢の頑固な神経症状が残ったとしても、前回の事故後にも同様の障害が残り、等級表一二級一二号に該当する旨の認定を受けていたのだから、左上肢の頑固な神経症状については、治療の必要は認められるが、本件事故による後遺障害とは認められない。

また、本件事故の態様、画像所見等の他覚所見などによれば、本件事故だけで手術をしても改善されないような重い後遺障害が残ったとは考え難く、ほかに後縦靱帯骨化等による椎間孔の狭小化などの素因が影響を与えていると認められ、その影響も決して小さくないと思われる。しかし、前記のとおり、認定済みの後遺障害分を控除しており、損害の公平な負担を併せて考慮すると、さらに大幅な減額をすべきではなく、減額の割合は二〇%にとどめることが相当である。

したがって、原告は、本件事故により、頸椎捻挫などの傷害を負い、その治療のため、頸椎前方除圧固定術などを受け、その結果、左上肢に頑固な神経症状(等級表一二級一二号)、脊柱の変形(等級表一一級七号)の併台一〇級相当の後遺障害が残ったが、左上肢の頑固な神経症状についてはすでに後遺障害の認定(等級表一二級一二号)を受けていたからその分を控除し、さらに、後縦靱帯骨化等の素因が影響を与えていると認められるからその分として二〇%減額することが相当であると認められる。

以下、原告と被告らの主張を検討する。

三  これに対し、原告は、前回の交通事故後に後遺障害と認定された左上肢の頑固な神経症状と本件事故後に認定された左上肢の頑固な神経症状は、異なる後遺障害であるから、損害から控除すべきではないと主張し、その理由は、前回の交通事故後の画像所見と本件事故後の画像所見を比べると、本件事故後に頸椎椎間板ヘルニアが発症していると認められるからであると主張する。

しかし、画像所見を検討すると、前回の交通事故後に画像上骨性の突出が認められ、これが症状に影響を与えたと考えられるとともに、本件事故後も画像上骨性の突出が認められ、やはりこれが症状に影響を与えたと考えられる。これに対し、原告は本件事故後に外傷性頸椎椎間板ヘルニアが発症したと主張するが、証拠上、それが明らかとまではいえない。そして、症状を検討しても、事故前も事故後も、左上肢の痛みやしびれが主な症状であり、ほとんど変わらない。また、原告が本件事故前に仕事をしていたとしても、認定された後遺障害は必ずしも重いものではないから、後遺障害の認定後にある程度の仕事をすることは可能であったと考えられる。

これらの事実を検討すると、前回の交通事故後に認定を受けた後遺障害分を本件事故による損害から控除することが相当である。

四  また、被告らは、原告の症状は、頸椎症または後縦靱帯骨化症によるものだから、本件事故との間に相当因果関係がない旨の主張をする。

しかし、これらの所見があったとしても、本件事故前のかなりの間、痛みやしびれなどがなく、普通に仕事をしており、本件事故後に痛みやしびれが現われたというのであるから、原告の症状と本件事故との間には相当因果関係があると認めることが相当である。

さらに、被告らは、原告の担当医が頸椎椎間板ヘルニアと誤診し、手術の必要性相当性がないにもかかわらず、前方除圧固定術を施行したから、脊柱の変形の後遺障害が残ったとしても、本件事故と相当因果関係がない旨の主張をする。

確かに、証人の担当医岸本はこれを否定するかのようであるが、前回の交通事故後の画像所見によれば、骨性の突出が認められ、これが症状に大きな影響を与えていると考えられる。また、被告ら提出の意見書によれば、骨性の突出を越える椎間板ヘルニアはないと述べられている。

しかし、この意見書によっても、椎間板の突出があるかどうかを判断するためには、各検査による画像を総合的に検討する必要があるとされている。そして、担当医岸本は、画像所見などの検査の結果、頸椎椎間板ヘルニアと診断し、前方除圧固定術を施行したと証言しており、証拠上、この診断が誤りであるとまでは認めがたい。

したがって、結局、担当医の診断が誤診であったとまでは認められず、被告らの主張は採用しない。

なお、付け加えると、原告には自覚症状が続き、その程度も重く、担当医は頸椎椎間板ヘルニアと診断し、相談のうえ、前方除圧固定術を施行したと認められるから、手術の必要性及び相当性があると認めることが相当である。

五  ただし、本件事故の態様によれば、原告が頸椎に受けた衝撃は必ずしも大きなものとは思われない。そして、各医師の所見によれば、骨性の突出、つまり、骨棘の形成または後縦靱帯骨化も大きな影響を与えていると考えられる。担当医岸本も、基本的には自覚症状が主であると認めていたことが窺える。

しかし、前記認定のとおり、前回の交通事故後に認定された後遺障害分を控除するから、これからさらに大幅な減額をすべきではなく、二〇%の割合で減額することが相当である。

第四損害に対する判断

一  治療費 五三一万四二二四円

治療費は、林病院三六八万三二六六円、豊中ひかり病院一四七万八四四〇円、さわ病院一五万二五一八円の合計五三一万四二二四円と認められる。(争いがない。)

二  入院雑費(一三〇〇円×一一三日) 一四万六九〇〇円

入院雑費は、一四万六九〇〇円(一三〇〇円×一一三日)と認められる。

三  入通院慰謝料 二〇〇万〇〇〇〇円

入通院慰謝料は、二〇〇万円が相当である。

四  休業損害 七五八万三三三三円

基礎収入は、原告が本件事故直前に七日間(平成八年一〇月三一日採用)タクシーの運転手の仕事をして一日一万九一九六円の収入を得ていたこと(甲二)、原告の本件事故当時の年齢五四歳前後一の平均賃金などを考慮し、年収七〇〇万円と認めることが相当である。

休業期間は、原告が負った傷害の内容、治療の内容、入通院の状況、後遺障害の内容を検討すると、平成一〇年四月二日までの約一六か月の間、まったく就労ができなかったとまでは認め難く、そのうち一三か月仕事ができなかったと認めることが相当である。

したがって、休業損害は、七五八万三三三三円と認められる。

五  逸失利益 一〇六三万五八四〇円

基礎収入は、原告が本件事故前に実際に得ていた収入、原告の症状固定時の年齢五五歳から就労可能な六七歳までの平均賃金などを考慮し、年収六〇〇万円と認めることが相当である。

労働能力喪失率は、一一級相当の二〇%と認めることが相当である。

就労可能期間は、一二年(ライプニッツ係数八・八六三二)と認められる。

したがって、逸失利益は、一〇六三万五八四〇円と認められる。

六  後遺障害慰謝料 三六〇万〇〇〇〇円

後遺障害慰謝料は、認定済みの後遺障害があることを考慮すると、三六〇万円が相当である。

七  結論

したがって、原告の損害は、別紙二のとおりである。

なお、既往症減額については、損害の全部から既往症減額分を控除し、控除後の残金からさらに既払金を控除することが相当である。

(裁判官 齋藤清文)

10―12252 別紙1 原告主張の損害

1 治療費 531万4224円

2 入院雑費(1300円×113日) 14万6900円

3 入通院慰謝料 293万0000円

4 休業損害 982万8352円

(1) 基礎収入は、1日1万9196円

(2) 休業期間は、平成10年4月2日まで512日

5 逸失利益 1634万9474円

(1) 基礎収入は賃金センサス657万1200円

(2) 労働能力喪失率27%(10級)

(3) 期間12年(ホフマン係数9.215)

6 後遺障害慰謝料(10級) 480万0000円

合計 3936万8950円

既払金 990万4990円

既払金控除後 2946万3960円

弁護士費用 250万0000円

残金 3196万3960円

10-12252 別紙2 裁判所認定の損害

1 治療費 531万4224円

2 入院雑費(1300円×113日) 14万6900円

3 入通院慰謝料 200万0000円

4 休業損害 758万3333円

(1) 基礎収入は、年収700万円

(2) 休業期間は、13か月

5 逸失利益 1063万5840円

(1) 基礎収入は、年収600万円

(2) 労働能力喪失率20%

(3) 期間12年(ライプニッツ係数8.8632)

6 後遺障害慰謝料 360万0000円

合計 2928万0297円

既往症減額20%(×80%) 2342万4237円

既払金(乙33) 1546万5844円

自賠責保険金 461万0000円

任意保険金 529万4990円

労災保険金合計 556万0854円

療養補償 1万0000円

休業補償 235万7562円

障害補償 319万3292円

既払金控除後 795万8393円

弁護士費用 100万0000円

残金 895万8393円

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